新卒採用の歩留まりとは?計算式や平均値・低下する原因・改善方法を解説

新卒採用の歩留まりとは?計算式や平均値・低下する原因・改善方法を解説
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新卒採用において、「選考の各フェーズまでどのくらいの割合で応募者が進んでいるか」を把握し、コントロールしておくことは重要です。それぞれのフェーズに進んでいる人数の割合を「歩留まり」と呼びますが、これが低下してしまうと、採用コストの増加や採用計画の遅れなどさまざまな影響が出てしまいます。

歩留まりを分析する際は、「自社においてどこのフェーズに課題があるのか?」を平均値と比較して、客観的に評価していくのがおすすめです。もし歩留まりが低下している場合、何らかの原因があると考えられます。

今回の記事では、新卒採用にかかわっている担当者に向けて、歩留まりの概要や平均について解説します。新卒採用の歩留まり低下の原因や改善方法、役立つ施策もあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

なお、歩留まりの目標数値や手法を決める際に役立つKPIシート(Excel)もご用意しています。記入例付きですので、そのまま人数を入力するだけで採用人数のKPI設計にご活用いただけます。

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新卒採用の歩留まりとは?

新卒採用の歩留まりとは?

新卒採用においての歩留まりは、採用における各フェーズに進んだ人数の割合のことを示します。企業にとって新卒者の内定率を上げるためには、採用活動において「応募数」をはじめ、「書類選考・筆記試験・面接などの選考に進んだ人数」と「内定数」、さらには「実際に入社した人数」などを把握しなければなりません。

いずれも大切なフェーズであり、採用担当者にとっては悩みの種です。もし、歩留まりの確認を疎かにしてしまった場合、選考過程で受験者の離脱を増やしてしまったり、内定者の辞退を招いてしまったりする可能性があるでしょう。そのため、新卒採用の歩留まりを計算し、さらに改善して内定率を上げることが重要です。

新卒採用における項目ごとの歩留まりの計算式や平均値

新卒採用における項目ごとの歩留まりの計算式や平均値

新卒採用の歩留まりにおける内定率を上げるためにも、項目ごとの計算式や平均値を知る必要性があります。

内定率、受験率、面接通過率、途中辞退率、内定辞退率の歩留まり率を知ることで、数値を平均値以上にするための策を練ることが可能になるでしょう。

採用歩留まりの項目ごとの計算式

採用歩留まりを計算する際は、採用から内定まで全ての過程で計算します。

用語の意味は以下のようになります。

  • 内定率:受験者数に対する内定者数の割合。新卒一括採用において重要な指標であり、受験者数に対してどのくらいの内定者数が出たのかを知るために必要です。
  • 受験率:応募者数(エントリー数)に対する、実際に受験した人数の割合。採用目標を達成するためにどのくらいのエントリー数が必要になるのかを決めるための目標値です。
  • 面接通過率:面接を受けた数に対する通過者数の割合。面接の受験者数が何人必要になるのかの目標値を定めるために計算されます。
  • 途中辞退率:受験者が途中で選考を辞退した割合。途中辞退率は、多くの企業が計算していない項目ですが、受験者が途中で辞退したということは他によい企業に採用された可能性があると判断できるので、新卒採用に悩んでいる場合は計算してみることをおすすめします。
  • 内定辞退率:内定者が内定を辞退した割合。内定承諾率は、自社の採用力を測るための数値です。内定承諾率が高いほど採用力のある企業といえます。

採用歩留まりの項目ごとの計算式は、以下の通りです。

採用歩留まりの項目ごとの計算式
採用歩留まりの項目ごとの計算式

内定率の平均値

ここでは、採用歩留まりの項目のなかでも「内定率」(内定出し人数/プレエントリー受付人数)と「内定承諾率(入社率)」(内定辞退人数/内定出し人数)を計算し、従業員規模別に紹介します。就職みらい研究所「就職白書2023」によれば、「採用予定数を100」とした場合の、内定率の平均値は以下の通りです(小数点第1位まで、以降は切り捨て)。

「採用予定数を100」とした場合のプレエントリー受付人数、内定出し人数、内定辞退人数、内定人数の割合
「採用予定数を100」とした場合のプレエントリー受付人数、内定出し人数、内定辞退人数、内定人数の割合

従業員規模300人未満の場合

「プレエントリー受付人数が7,136.0人」「内定出し人数が143.7人」であり、内定率の平均は2.0%です。実際の内定人数は81.8人なので、内定承諾率は56.9%となっています。

従業員規模300〜999人の場合

「プレエントリー受付人数が7,163.0人」「内定出し人数が192.0人」であり、内定率の平均は2.6%です。実際の内定人数は89.4人なので、内定承諾率は46.5%となっています。

従業員規模1,000〜4,999人の場合

「プレエントリー受付人数が5,953.9人」「内定出し人数が174.2人」であり、内定率の平均は2.9%です。実際の内定人数は95.5人なので、内定承諾率は54.8%となっています。

従業員規模5,000人以上の場合

「プレエントリー受付人数が6,254.5人」「内定出し人数が187.3人」であり、内定率の平均は2.9%です。実際の内定人数は94.5人なので、内定承諾率は50.4%となっています。

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新卒採用の歩留まり低下の原因

新卒採用の歩留まり低下の原因

もし、新卒採用の歩留まり率が平均値よりも低くなっている場合、何らかの原因があると考えられるでしょう。

内定取得数の増加が原因となることもありますが、求人原稿の内容と面接で伝える内容が異なっていたり、連絡や説明が不足していたりと、致命的なミスをしていることも考えられます。

ここでは、新卒採用の歩留まり率が低下する原因について説明します。

内定取得数が増加している

市場全体で受験者1人あたりが取得する内定数が増えれば、その学生が自社の採用・選考フローに残る割合や内定を承諾して入社する割合が下がるため、それだけ歩留まり率も下がります。

基本的に、1人の学生が自社のみに全てを賭けている可能性は少ないと考えてよいでしょう。別の企業の面接を受けている学生にとって、内定が早く出た企業に気持ちが傾くのが自然なことです。

受験者の内定取得数の増加により歩留まり率が低下する背景には、自社の面接スケジュールの日程が遅れてしまったり、選考フローが長かったりすることが原因として挙げられるでしょう。

掲載内容と面接での説明が異なる

企業に対する信頼は、学生にとって非常に大切な項目です。そのため、企業が掲載した求人原稿の内容と面接で伝えられる内容が異なっている場合、学生は信頼に足る企業ではないと考え、他の企業に移ることも十分に考えられます。結果として、歩留まり低下につながるでしょう。

実際の内容に違いはない場合も、採用面接官に情報がうまく共有されていないことによって、伝わり方に齟齬が出てしまうことがあります。受験者を混乱させないよう、仕事内容や勤務時間、給料など、働くにあたって必要最低限の項目には特に注意が必要です。

連絡・説明が不足している

連絡や説明は自社に応募する学生任せにせず、企業側が自主的に発信する努力が求められます。自社に入社したいと応募した受験者に最後まで残ってもらうためには、各フェーズでの必要な連絡や説明が欠かせません。

エントリーしてくれたことへのお礼のメール送信や、面接の設定、面接後の対応、仕事の具体的な説明など、学生の入社意欲を引き出すような連絡が重要です。採用活動時の連絡・説明を疎かにしていると、学生を途中で他の企業に取られてしまい、歩留まり率の低下につながります。

採用ブランディングができていない

これから働く企業を選んでいる段階の学生にとって、「企業からどのような魅力が感じられるのか」「働きたいと思える企業かどうか」といったポイントは重要です。学生の多くは他の企業の説明会も受けている可能性が高いため、魅力を感じない企業は選考対象外になるでしょう。

企業の採用ブランディングが十分にできていない場合、複数の内定を持っている学生が競合他社の内定を承諾する可能性は十分にあります。自社の強みや魅力が伝わらないと、歩留まり低下に拍車がかかってしまうでしょう。

競合他社と待遇面などで差がある

競合他社と待遇面などで差があるのも、新卒採用の歩留まりを低下させる要因です。学生が将来の生活を考える際、給与・福利厚生は大きな要素となります。マイナビ「2023年卒大学生活動実態調査(3月)」によれば、「企業に対して安定性を感じるポイント」として、「福利厚生が充実している」が2位になっています。

他にもボーナスやインセンティブ、勤務時間や勤務地、キャリアアップのチャンスなど、さまざまな面で他社と比べられていると認識しておく必要があります。なぜなら、企業文化が競合他社と比較して魅力的でない場合、それが学生にとってマイナスポイントとなってしまう可能性があるからです。

学生側の事情が影響している

新卒採用の歩留まり低下は、学生側の事情も大きく関係しています。例えばエントリー段階から志望度が高くない場合、企業からのリマインドがなければ、そもそも説明会や選考の存在すら認識できていない可能性があるでしょう。

一方で、家族や周囲からの反対にあっているケースもあります。学生やその家族は、安定した職や高収入、社会的な評価など学生に対して一定の期待を持っているケースが多いでしょう。本人の選んだ企業が家族の期待通りでない場合、「大企業でなければNG」など、反対の意見が出ることも考えられます。

新卒採用の歩留まり率が低下する際の改善方法

新卒採用の歩留まり率が低下する際の改善方法

新卒採用の歩留まり率が低下する原因がわかれば、改善する方法が見えてくるはずです。学生の気持ちが離れないようにするためには、こまめに連絡したり、採用ブランディングをしっかり定めたりするなど、さまざまな改善方法があります。

歩留まり率の分析をする

新卒採用の歩留まり率が低下している場合、採用媒体ごとの歩留まり率を分析することが不可欠です。「どの媒体からのエントリーが多いか」「その後の選考の進行状況(書類選考通過者、面接通過者、最終的な採用者数など)」を記録します。歩留まり率の計算をしたら、面接官や採用担当者からのフィードバックを収集しつつ、採用媒体ごとの比較を行いましょう。

採用媒体ごとの比較をする際は、媒体ごとのコストと採用率を明確化するのが重要です。例えば高コストの媒体からの応募者が少なかったとしても、その応募者の採用率が高ければ、結果として費用対効果が高いと評価できる場合があります。分析を経て、採用課題の解決やコストパフォーマンスの高い媒体への注力に取り組めば、歩留まり率の改善を期待できるでしょう。

待遇や福利厚生の見直しをする

新卒採用の歩留まり率改善のためには、待遇や福利厚生の見直しをするのも重要です。待遇の見直しに関しては、「基本給」「賞与やインセンティブ」の見直しを実施します。競合他社との比較を基礎として、基本給を適正な水準に設定しつつ、明確な評価基準や賞与・インセンティブのシステムを設けましょう。

福利厚生の見直しに関してはさまざまな方法があり、企業によって取り組むべき分野が異なります。昨今はワークライフバランスを重視する学生も多いため、例えば「柔軟な勤務時間やリモートワークの導入」「有給休暇の取得促進」など、現代の新卒学生にとって魅力的な環境を考えます。

オンライン選考の環境を整える

新卒採用に限らず、オンライン選考の環境を整えるのも重要です。オンライン選考の環境が不十分であることが原因で、歩留まり率の低下を引き起こす可能性もあります。例えばエントリー時の志望度がそれほど高くない場合、わざわざオフィスまで訪問することに気が引けてしまい、選考を辞退してしまうなどのケースです。

オンライン選考の環境が整っていると、地域を限定する必要がなくなるため、地方学生にもアピールできるようになります。時間帯の制約が少なくなるため、学生にとっての利便性の向上が期待できるのも大きなポイントです。

母集団形成に力を入れる

新卒採用での歩留まり低下を防ぐためには、自社に対して興味や適性を持つ学生を多数集めること、つまり母集団形成に力を入れる必要があります。母集団形成の手法はさまざまですが、特に新卒の場合は大学や学部との連携や、SNS・デジタルマーケティングの活用が重要です。例えばSNSは、企業の魅力や働く環境などをリアルタイムで伝えられるため、学生との関係構築を促進しやすくなります。

企業側からアプローチをする手法である、ダイレクトリクルーティングを併用するのもおすすめです。潜在層(就職活動を積極的に開始していない、もしくは考えてはいるが動いていない学生)にもアプローチできるため、自社に合った学生とマッチできる可能性があります。

早くこまめな連絡を心がける

採用したい学生を競合他社に行かせないためには、こまめな連絡を早めに取ることが重要です。競合他社に出遅れて連絡するようでは、学生の選択肢を増やしてしまいます。

まずは、受験者のモチベーションが高い当日中に連絡するように心がけましょう。そこから各フェーズへ移行するたびに、こまめに連絡することで学生のモチベーションをキープできます。

予約の確認電話や、面接日程の調整を早めに連絡するだけでも歩留まり率を上げられます。面接の1~2日前までにリマインドを連絡するなど、丁寧な対応を心がけるだけで、競合他社に出遅れずに済むでしょう。

距離感を縮める懇親会やイベントを開催する

新卒採用において、企業と学生の距離感が開いている場合だと、簡単に競合他社に流れてしまう可能性が高いです。学生との距離感を縮めつつ、歩留まり改善をするためには、懇親会やイベントなどを開催するのがおすすめです。

近年では懇親会、社内見学会、ランチ会、オンラインによる説明会やランチ会など、さまざまなイベントを設けている企業もあります。口コミや評判などでは決してわからないような部分を全面的に公開して、学生との距離感を縮められれば、自社に興味を持つ可能性は十分にあるでしょう。

実際の企業風土をアピールすることで、他社よりも距離感を縮めて興味を持ってもらうことが大切です。

入社へ向け積極的に働きかける

入社へ向け積極的に働きかけるのも、歩留まり改善に欠かせません。内定を決めたところで、採用活動が終わりというわけではありません。内定者は、本当にこの企業で働いていけるのか、雇用条件は本当に大丈夫なのかなど、さまざまな不安を抱えている可能性があります。不安を解消できないままの状態では、入社までに内定を辞退する恐れもあるでしょう。

そのため、入社に向けたクロージングを実施し、内定者に安心してもらうことが重要です。例えば、雇用条件をすり合わせるためにオファー面談を実施したり、不安を抱える内定者のために本音が話せるカジュアル面談を設定したり、内定者が企業に求める志向性に対して実現できることを伝えたりするなど、さまざまな方法が取り入れられます。

歩留まり改善に役立つ施策

歩留まり改善に役立つ施策

ここでは、歩留まり改善に役立つ施策として、ダイレクトリクルーティングとリファラル採用の2つを紹介します。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングは、企業が自ら目的の候補者を絞り込み、直接アプローチをする採用手法です。新卒採用においては、学生との直接のコミュニケーションを重視する企業によって活用されるケースが見られるようになっています。

ダイレクトリクルーティングには、「適切な候補者を絞り込みやすい(母集団形成に役立つ)」「他の企業との競合を避けつつ独自の採用ルートを構築しやすい」といったメリットがあります。さらに個別にコミュニケーションをするため、初回のアプローチから入社までのプロセスにおいて候補者との信頼関係を構築しやすく、選考の各段階での脱落を防ぎやすいのも大きな利点です。歩留まり率の低下という課題の解決にも大きく役立つでしょう。

直接アプローチする際には、企業の魅力や求める人材像、提供する待遇やキャリアパスなどの情報を明確かつ正確に伝えることが重要です。学生とのコミュニケーションを重視するため、面接後のフォローアップも欠かせません。

リファラル採用

リファラル採用とは、既存の従業員に知人や友人、過去の同僚、学生時代の後輩や友人などを推薦してもらい、それをもとに採用する手法です。既存の従業員が推薦することで、推薦される候補者の人柄やスキル、適性に対する信頼性が高まるのが大きなメリットといえます。

推薦する従業員は、企業の文化や価値観をよく知っているため、その文化に合った候補者を推薦する傾向があります。「企業文化が合わなさそうだと感じて辞退する」などで歩留まりが低下するケースも防ぎやすくなるでしょう。

リファラル採用を成功させるためには、希望する人材像を明確にしつつ、社内全体での取り組みを促進する体制を構築するのが重要です。

歩留まり率の低下を改善するためには企業が学生に対して寄り添うことが大切

歩留まり率の低下を改善するためには企業が学生に対して寄り添うことが大切

歩留まり率の向上は、多くの企業にとって重要な採用課題といえます。従業員は非常に大切な存在であり、その確保には力を入れるべきでしょう。

歩留まり率を高めるためには、学生が自社に応募した時から、すでに競合他社との競争が始まっていることを理解しておかなければなりません。応募があった段階で、競合他社に流れないようにこまめな連絡をしたり、距離感を縮めるために懇親会やイベントなどを開催したり、入社に向けて不安を払拭するためのクロージングを実施したりと、出遅れないように先手の行動を取ることが大切です。

こうした対応を疎かにすることは、歩留まり率の低下につながります。歩留まり率の低下を改善するためにも、企業を支える未来の従業員となる学生へ誠意ある対応を心がけましょう。

歩留まりの目標数値の設定や進捗確認ができる、記入例付きのKPIシート(Excel)をご用意しています。新卒採用において、歩留まりを把握してPDCAを回していくにあたり、ダウンロードしてご活用ください。

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人事ZINE 編集部

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