新卒採用オンライン化の動向まとめ|メリット・課題と成功ポイント
新型コロナウイルス感染症の流行により、急速に普及した新卒採用のオンライン化。急きょ対応を進めたものの、従来通りの採用方法では上手くいかないと感じている採用担当者も多いかもしれません。
まだまだオンライン対応が必要とされる情勢のなか、今後はどのような取り組みが求められるのでしょうか。
今回は、新卒採用のオンライン化をめぐる動向や実施するメリット、成功させるためのポイントなどを解説します。

目次
新卒採用のオンライン化をめぐる動き

2020年から急速にオンライン化が進んだ新卒採用市場。まずは、現在の採用市場の動向について解説していきます。
企業側はオンライン化に積極的
HR系スタートアップ企業であるZENKIGEN社とシード・プランニング社が行なった共同調査によれば、2020年に新卒採用活動のオンライン化を進めた企業は57.6%と、半数以上に上ったことが明らかになっています。
また、オンライン化の理由については「新型コロナウイルス感染症拡大対策のため」と回答した企業が94.5%で、29.1%の「時間や距離にとらわれない面接の実現」に大差をつける形となりました。
一方、2021年以降もオンライン化を継続する予定と答えた企業は75.0%です。感染症対策としてオンライン採用を始めたものの、メリットを感じて継続すると考えている企業が多いことがわかります。
参考:PR TIMES「企業の新卒採用、オンライン導入率は57.6%、全体の9割が2020年にオンライン採用を導入開始」
学生側にも普及している状況
就職みらい研究所が大学生・大学院生を対象に行なった調査「【2021年卒 就職活動TOPIC】」によると、就活生のうち半分以上がオンラインでの個別企業説明会を経験しており、約7割がオンライン面接を経験していることがわかっています。ただし、オンライン面接を10社以上経験している学生が約15%いる一方で、未経験の学生が約30%いるなど、オンライン就活の経験値に幅がある現状もうかがえます。
一方で、オンラインでの個別企業説明会を希望する学生は38.4%、オンライン面接を希望する学生は22.6%と、オンライン就活を希望する学生の割合はそれほど高くありません。オンライン採用の経験が浅い学生ほど、対面を希望する傾向にあることもわかっています。
オンライン採用を希望しない理由としては「会社の雰囲気を感じにくい」「働くイメージができない」といった声が挙がっています。
参考:就職みらい研究所「【2021年卒 就職活動TOPIC】」

新卒採用をオンライン化するメリット

採用活動をオンライン化することは、感染症対策以外にも以下のようなメリットをもたらします。
学生の利便性向上
前章で紹介した「【2021年卒 就職活動TOPIC】」では、就活のオンライン化に消極的な学生が一定数いる反面、好意的な意見も多く見受けられます。実際に寄せられた意見の一部を見てみましょう。
- 金銭的・時間的な負担が軽減され、地方学生と都市学生の就職に関する格差が緩和された
- Webの方がスケジュールを立てやすく、交通費もかからないので、そういった点ではメリットもあったと思う
- 移動時間がなくなり、授業との両立がしやすかった
このように、複数の面接会場を移動する負担が軽減されたことに対する意見が多くなっています。移動の手間が削減されたことが、交通費の負担軽減、地域格差の解消といったメリットを学生にもたらしています。
企業イメージの向上効果
オンライン化に対する素早い対応力を見せることで、企業に対するポジティブなイメージを向上させる効果を狙うこともできます。
採用活動の急速なオンライン化は、企業と学生の双方にとって不安の大きいものでしたが、世のなかの情勢を踏まえ、積極的にオンライン化を進める姿勢は、学生にとっても印象に残るものです。従来の方法にこだわらない柔軟性があることや、入社後も在宅ワークなどがしやすく働きやすい企業であることをアピールできます。
採用活動の効率化
オンライン化の最大の利点は、場所を問わずに会社説明会や面接を実施できることです。これまで行ってきた会場の確保や予約管理といった手間が不要になります。全国規模で採用を行っている企業であれば、出張にかかっていた費用や時間を削減しつつ、全国の学生と接点を持つことが可能です。
また、時間や場所の制限がなくなることで、説明会や面接をより多く実施できるようになります。学生と接する機会や時間を増やせば、より自社にマッチする人材と出会ったり、学生とのコミュニケーションを深めたりすることにつながります。
新卒採用のオンライン化の課題と成功ポイント

新卒採用のオンライン化を進めるには、具体的にどのような点に気をつけるべきなのでしょうか。オンライン化の課題と、成功させるためのポイントを解説します。
学生との接点の確保
全国の学生と接点を持ちやすくなる一方、リアルのイベントで発生していた学生との偶発的な出会いが減ることも確かです。合同説明会などのイベントでは、たまたまブースの前を通りかかった学生が興味を持って立ち寄ってくれるといった機会がありましたが、興味のある企業や業界をピンポイントで予約するオンライン説明会ではそのような機会はほぼありません。そのため、学生との接点をどのように創出するかが課題となります。
そこで、リアルイベントの開催が難しくなったことで学生間の口コミを重視する学生が増えていることを生かして、「SNSを活用して学生と気軽に接点を持つ」「SNSと連携したイベントを企画して口コミを増やす」といった施策を考えましょう。
また、多くの学生が参加できるオンラインイベントの開催や、企業から学生に直接アプローチをかけるダイレクトリクルーティングも効果的です。
自社の魅力の訴求
直接会社に来る機会がなくなるオンライン採用においては、Webでのやりとりのみで自社の魅力を伝えなければいけません。職場の雰囲気や社風、空気感などはオンラインで伝えることが難しく、「他社と差別化を図ることができなかった」と感じる採用担当者は少なくないようです。オンライン上でも学生と適切なコミュニケーションをとり、自社の魅力を十分にアピールすることが課題になります。
そこで、会社説明会とは別に、会社の雰囲気や社風を伝えるためのイベントを開催するのも一手です。社員を交えた座談会やディスカッション、学生参加型のレクリエーションといった会社との交流の場を作ることで、魅力を感じてもらいやすくなります。
ミスマッチの防止
直接コミュニケーションがとれず定性的な情報の見極めが難しいことは、企業と学生の双方にとって不便といえます。人柄やポテンシャルといった履歴書やESからは読み取れない情報をオンライン上で見極めることは困難です。また、学生にとっても会社のビジョンや熱意といった面を感じることが難しくなっています。
お互いの理解不足は入社後のミスマッチや早期離職の原因となるため、相互理解を深める工夫をすることが課題です。
そこで、面接の時間を増やす、社員との交流イベントを開催するなど、コミュニケーションの頻度と質を向上させる取り組みを行いましょう。
オンライン面接では緊張して上手く話せないという学生も多いため、アイスブレイクを上手く取り入れて雰囲気を和ませる工夫も重要です。表情や身振り手振りを大きくするなど、オンラインでの話し方を工夫することも効果的でしょう。
内定から入社までのフォロー
対面よりも多くの企業に応募がしやすいオンライン採用においては、学生の志望度がわかりにくいという声もよく聞こえてきます。インターンシップや内定者交流会といったリアルの施策をとりにくくなったことにより、学生の入社意欲が不安定になりやすい傾向があるようです。オンライン上だけでやりとりをしていても、いまいち入社する実感が持てないと感じる学生も見受けられます。
内定を出した学生に対し定期的なフォローを行い、モチベーションを維持する施策が必要ですが、それらをオンライン上でどのように実現していくかが課題です。
成功のポイントとしては、社員や内定者インタビュー、社内ニュースなど学生にとって有益な情報の発信を行うなど、学生の入社に対する意欲を高める施策を行うことが挙げられます。内定者同士のオンライン交流会、現役社員に対する相談会を開催するのもおすすめです。
面接官の評価のブレと対策を行う
オンライン面接では、表情や雰囲気などの非言語情報が読み取りづらいため、対面以上に面接官の評価がばらつきやすくなります。この属人化リスクを放置すると、候補者の評価の公平性が損なわれたり、ミスマッチ採用の原因にもなります。
対策としては、評価項目を明文化したテンプレートの共有、評価観点のすり合わせ研修、ツールによる記録・可視化の標準化が有効です。特に一次面接では、基準の統一が候補者体験にも直結するため、全面導入が推奨されます。
| 課題 | 原因 | 対策 | 推奨ツール・方法 |
|---|---|---|---|
| 評価のばらつき | 面接官ごとの判断基準の差 |
評価項目の定義・テンプレート配布 |
Googleフォーム、ATS評価シート |
| 判断基準の不一致 | 面接前の準備不足 |
ロープレ研修、事前すり合わせ会議 |
社内研修 |
| 情報共有の不十分さ | 評価が属人化・主観化 |
面接記録の一元管理・共有 |
ATS内メモ、Slack共有、録画活用 |
オンライン辞退防止の工夫をする
オンライン採用では、候補者との物理的な接点がない分、「企業への親近感」や「安心感」が生まれにくく、辞退率が高まりやすい傾向があります。特に選考過程の合間や内定後のコミュニケーション不足は大きな離脱要因です。
対策としては、選考途中での定期接点設計、選考ステップの透明化、オンライン座談会や動画による社風共有が効果的です。双方向のコミュニケーション機会を増やすことで、エンゲージメントを高め、辞退を防ぐことができます。
| 課題 | 原因 | 対策 | 推奨手法・ツール |
|---|---|---|---|
| 選考途中の辞退 | 応募者の不安や企業理解の浅さ |
定期連絡・選考情報の可視化 |
メール・Slack・ATS通知 |
| 内定辞退 | 内定後の疎遠さ・ミスマッチ感 |
オンライン座談会、フォロー動画配信 |
Zoom、YouTube、Loom |
| 応募者の関与度低下 | 一方通行の情報提供 |
質疑応答、面談機会の追加 |
個別面談、LINE WORKS等チャット連絡 |
オンライン採用の実務ステップとツール活用

オンライン採用を成功させるには、単にZoomなどのツールを導入するだけでは不十分です。企業が成果を出すには、フロー全体の設計・適切なツール選定・面接官のスキル均質化・内定後のフォローまで一貫して最適化する必要があります。
本章では、オンライン採用の実務ステップを具体的に分解し、それぞれのフェーズで役立つツールや工夫を解説します。初めてオンライン採用に取り組む企業だけでなく、すでに運用しているが「歩留まり」や「辞退率」で課題を感じている担当者にも有効な内容です。
| ステップ | 目的 | 必要な要素 |
|---|---|---|
| 採用設計 | 候補者体験の最適化 |
UX設計、選考フローの見直し |
| 説明会 | 興味喚起・情報提供 |
双方向性、動画活用 |
| 面接 | 人柄・スキルの評価 |
評価基準の共有、記録の標準化 |
| 管理 | 選考状況の可視化 |
スケジュール管理、情報一元化 |
| 内定フォロー | 離脱防止・関係性維持 |
定期連絡、社風の共有 |
オンライン採用の基本フローと設計ポイント
オンライン採用では、対面とは異なる選考体験を設計する必要があります。説明会から内定承諾までの一連の流れをオンラインで完結させる場合、各ステップに応じたツールや設計思想を明確にすることが重要です。
例えば、説明会では「企業理解の浸透」、面接では「人柄の見極め」、内定後は「不安の払拭」を軸に構成することで、候補者体験を損なわずに進められます。全体を「一貫性あるUX」として捉える視点がカギです。
| フェーズ | 目的 | 留意点 |
|---|---|---|
| 説明会 | 企業理解・興味喚起 |
動画やスライドの一貫性、視聴環境 |
| 面接 | 能力・人柄の評価 |
面接官の教育、評価項目の明確化 |
| 内定後 | 不安の解消・承諾促進 |
コミュニケーション密度とタイミング |
オンライン説明会・選考に使える主要ツールと特徴
オンライン採用では、目的に応じて適切なツールを選定することが成功の分かれ道となります。説明会では「Zoom」「YouTube Live」など、配信規模やインタラクション重視かで使い分けます。
面接では「Zoom」「Google Meet」などの一般的なツールに加え、録画対応や評価シート連携が可能なツール(例:HireVueなど)を使うと効率化が図れます。ATS(採用管理システム)と連携できるかも重要な選定ポイントです。
面接官トレーニングと評価のデジタル最適化
オンラインでは、表情や雰囲気の「非言語情報」が読み取りにくく、面接官ごとの評価ブレが起きやすくなります。そのため、面接官へのトレーニングが不可欠です。
具体的には、事前に評価項目を定義し、評価基準をすり合わせたテンプレートを配布することをおすすめします。。ATSやGoogleフォームを使ってスコア記録を統一することで評価の可視化・共有が可能になります。特に属人化リスクの高い一次面接では、これが離脱・ミスマッチ防止のカギです。
| 対策 | ツール・方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 評価の標準化 | 評価シート(Googleフォーム、ATS内) |
ブレの防止、比較可能性の確保 |
| 面接官教育 | ロープレ研修、録画フィードバック |
評価スキルの底上げ |
| 共有方法 | Google Drive、Slack、ATSメモ |
意思決定の迅速化と透明性向上 |
内定者フォローとオンラインコミュニケーションの工夫
オンライン採用では、内定後の「距離感」が離脱を生みやすくなります。したがって、フォロー体制のデジタル最適化が不可欠です。
具体的には、SlackやLINE WORKSなどで定期連絡の場をつくる、オンライン座談会や社内紹介動画を定期的に発信するなどして、企業への安心感と関与感を高めていきます。「連絡がない=不安」の構造を解消するためには、双方向コミュニケーションの場を意図的に設計することがカギとなります。
| フォロー施策 | ツール例 | 効果 |
|---|---|---|
| 定期連絡 | Slack、LINE WORKS、メール |
承諾率の向上、心理的距離の短縮 |
| 動画発信 | Loom、YouTube限定公開 |
社風理解・エンゲージメント強化 |
| オンライン座談会 | Zoom、Remo |
内定者同士・先輩との接点創出 |
まとめ

各企業が手探りしながら普及が進められている新卒採用のオンライン化。課題は多いものの、企業と学生の双方にとって多くのメリットを生み出していることも事実です。
オンライン採用は、今後も導入していく企業が増加していくものと考えられます。従来の採用方法にとらわれず、オンラインならではのコミュニケーションを模索し、採用の質を向上させていきましょう。

