新卒採用の歩留まりとは?計算方法・平均値・低下の要因・改善方法を解説
「採用活動を見直したいものの、具体的にどこに問題があり、どのように改善すればよいのかわからない」という悩みを抱いた経験がある採用・人事担当者の方は多いのではないでしょうか。採用活動のボトルネックを把握し、改善に役立てるための有効な指標として「歩留まり率」が挙げられます。歩留まり率を算出すると、採用活動における各フェーズの効率性を把握でき、具体的な改善策の立案に役立てられるのです。
今回は、歩留まり率の計算方法と平均値、歩留まり率が低下する原因や対策などを詳しく紹介します。
なお、歩留まり率の把握・管理に活用できるKPIシート(Excel)をご用意しております。歩留まり率の管理に加え、その他KPIの把握にも対応しています。ぜひご活用ください。

目次
新卒採用における「歩留まり」とは

「歩留まり(ぶどまり)」とは、採用活動において母集団からどれだけの候補者が次のフェーズに進んだかを示す指標です。もともとは製造業で使われる言葉ですが、採用の現場でも広く用いられており、選考プロセスごとの通過率を数値で可視化するために使われます。
新卒採用の「歩留まり率」とは
採用における「歩留まり率」とは、採用活動において各フェーズに進んだ人数の割合です。
例えば、100人の学生から応募(エントリー)があり、次の採用フェーズである書類選考に進んだ人数が85人であった場合、このフェーズの歩留まり率は85%となります。二次面接を受けた人数が20人で、最終面接へと進んだ人数が10人であれば、歩留まり率は50%です。

つまり、歩留まり率が高いほど途中離脱者が少なく、効率のよい採用活動といえます。歩留まり率が平均よりも低いフェーズがあれば原因を追求し、現状の採用フローを改善して採用効率を高めるのが採用活動の基本です。歩留まり率の算出方法を理解して自社の採用の問題点を把握することで、より効率的な採用フローを目指しやすくなります。
新卒採用の歩留まり率の計算方法・平均値

ここでは、新卒採用における歩留まり率の計算方法と、各フェーズにおける平均値を解説します。
基本的な計算方法
採用における歩留まり率の計算式は、以下の通りです。
歩留まり率=選考通過率÷選考対象数×100(%)
例えば、一次面接を受けた人数が85人で、二次面接に進んだ人数が38人であった場合の歩留まり率は、以下のように計算します。
38÷85×100=0.45×100=45(%)(小数点第2位まで四捨五入)
また、歩留まり率は応募から面接、内定、内定承諾までの各フェーズにおいて算出し、辞退者の多いフェーズがどこなのか把握することが大切です。各フェーズにおける歩留まり率の名称と計算式、おおよその平均値は以下の通りです。
| 各フェーズの歩留まり率 | 計算式(%) | 平均値 |
|---|---|---|
| 選考参加率 | 選考参加者数÷応募者数×100 | 20~30% |
| 面接通過率 | 面接通過者数÷面接受験者数×100 | 30~40% |
| 途中辞退率 | 途中辞退者数÷選考参加者数×100 | 20~30% |
| 内定率 | 内定者数÷選考参加者数×100 | 2~3% |
| 内定承諾率 | 内定承諾者数÷内定者数×100 | 30~40% |
選考参加率の計算方法・平均値
選考参加率の計算式は以下の通りです。
選考参加率=選考参加者数÷応募者数×100(%)
選考参加率は、応募した人数のうち、実際に選考へと進んだ人の割合です。主に「最終的な採用目標人数を達成するために、どのくらいの応募数が必要か」「応募者を選考参加に誘導する施策の成功度」を算出する目的で活用されます。新卒採用におけるおおよその平均値は、20~30%です。
面接通過率の計算方法・平均値
面接通過率の計算式は、以下の通りです。
面接通過者数÷面接受験者数×100(%)
面接通過率は、面接を受けた人数のうち、通過した人数の割合です。主に「採用目標人数を満たすために、面接を受験する人数が何人必要か」を逆算するため、「面接での絞り込みの厳しさ・緩さ」を測るために用いられます。新卒採用におけるおおよその平均値は、30~40%です。
途中辞退率の計算方法・平均値
途中辞退率の計算式は、以下の通りです。
途中辞退者数÷選考参加者数×100(%)
途中辞退率は、選考に参加した人数のうち、途中で辞退した人数の割合です。途中辞退が出た場合、自社よりも他社に魅力を感じたり、より良い条件を出されて他社を選んだりした可能性があるということです。途中辞退率はあえて算出しないケースもありますが、ターゲット層をうまく採用できていない企業は、ぜひ算出しておきましょう。
新卒採用における途中辞退率のおおよその平均値は、20~30%です。
内定率の計算方法・平均値
内定率の計算式は、以下の通りです。
内定者数÷選考参加者数×100(%)
内定率は、選考に参加した全学生のうち、最終的に内定が決定した人数の割合です。新卒一括採用の採用計画を立てる際に、最終的な目標値となる重要な指標といえます。新卒採用における平均値は、2~3%でしょう。
内定承諾率の計算方法・平均値
内定承諾率の計算式は、以下の通りです。
内定承諾者数÷内定者数×100(%)
内定承諾率は、内定を出した人のうち、内定を承諾した人数の割合です。内定には法的拘束力がなく、内定を出した学生が必ずしも入社してくれるわけではありません。例年の内定承諾率を把握しておくと、最終的な採用目標数を満たすためにどのくらい内定を出せばよいのか、目標を立てやすくなるでしょう。
新卒採用における内定承諾率の平均値は、30~40%です。
以下は歩留まり率の管理に活用できるKPIシート(Excel)です。ダウンロードのうえ、歩留まり率の計算や管理の際にぜひご活用ください。

新卒採用で歩留まり率が低下しやすい3つのフェーズ|解決策の例も紹介

新卒採用において選考参加者が途中離脱しやすいフェーズを把握しておくと、対策を立てやすくなります。ここでは、特に歩留まり率が低下しやすい3つのフェーズと、その原因・解決策を解説します。
説明会への参加
採用活動の初期段階で歩留まり率の低下が見られるのは、応募から説明会へ参加するフェーズです。ハードルの低さから、少し気になった企業には気軽に応募をする学生が多いものの、説明会への参加や履歴書の提出など具体的な行動を求められると、離脱する学生が多いものと推察されます。
とはいえ、応募の時点で意欲の高い学生のみにターゲットを絞りすぎると選考参加者が少なくなってしまい、最終的な採用目標数を達成できない可能性があるでしょう。説明会の段階で歩留まり率が低下するのは、ある程度仕方のないことだという考え方もあります。
解決策の例
- メール・LINE等の複数チャネルでリマインド通知を送る
- 参加メリット(例:選考優遇・先行情報の提供)を明確に提示
- 短時間かつテンポのよい構成で学生の集中力を維持
- アーカイブ視聴やオンデマンド型も併用し、柔軟に対応
参加率を高めるには、「面倒くさそう」「時間が合わない」などの障壁をどれだけ下げられるかがポイントです。
面接への参加
次に歩留まり率が低下しやすいのは、書類選考から一次面接へと進むフェーズです。それまではメッセージベースでやりとりが進んでいたところ、面接ではオフィスへの訪問やビデオ会議での顔合わせを求められるため、ハードルを高く感じて離脱する学生が多いものと考えられます。
また、学生は複数企業の選考に同時進行で参加しており、他社の選考と日程が重なってしまうケースもあるでしょう。中には面接を直前で辞退するいわゆる「ドタキャン」や、事前連絡がないまま約束の時間に現れないということも起こります。
面接段階での歩留まり率を高めるためには、学生へのフォローや内定出しまでのコミュニケーションを充実させ、同時にできるだけ採用フローを効率化することが重要です。
解決策の例
- 面接日程を学生側で自由に選べるようにする(スケジューラー導入)
- 面接官の印象を良くするための事前トレーニングやマニュアル整備
- 前日リマインド+フォローの連絡を丁寧に行う
- 学生の不安を解消するために、事前に面接の流れや雰囲気を伝える
「選ばれる立場」であることを忘れず、学生に安心感を与える設計とコミュニケーションが重要です。
内定承諾
新卒採用においては、内定出しから承諾を得るまでのフェーズも歩留まり率が低下しやすいポイントです。少子高齢化により若手人材が不足する昨今では、多くの学生が複数企業から内定をもらって、より条件の良い企業を選ぶのが普通となっています。
そのため、一定の割合で内定辞退が出ることを念頭におき、最終的な内定数をコントロールする工夫が大切です。もちろん、できるだけ内定辞退を減らすための施策は必要ですが、内定承諾率の数値が平均と比べて著しく低いわけでなければ、内定辞退が出たからといって必ずしも自社の採用活動に問題があるわけではないと考えてよいでしょう。
解決策の例
- RJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)を取り入れ、入社後のギャップを減らす
- 内定者同士・社員との座談会や懇親イベントでエンゲージメント強化
- キャリアビジョンや成長環境を可視化する資料・動画の提供
- 内定後の定期的なフォロー連絡を欠かさず、迷いを払拭する
「内定=ゴール」ではなく、内定後のフォローが最終歩留まり改善のポイントです。
新卒採用で歩留まり率が低下する理由・要因

新卒採用で歩留まり率が低下する要因は、フェーズによって何点か考えられます。ここでは、歩留まり率の低下につながる代表的な5つの理由を紹介します。
自社の魅力をうまく訴求できなかった
学生が途中離脱してしまう理由として、選考過程で自社の魅力をうまく訴求できていない可能性が考えられます。
もちろん、魅力を伝えたうえで「自分とは社風や価値観が合わない」と判断されて離脱しているケースもありますが、訴求に一貫性なかったり、口コミサイトやSNSで芳しくない評判が広まっていたりなど、戦略面に問題があるケースも少なくありません。
各フェーズでの会社説明に力を入れるだけでなく、戦略的な「採用ブランディング」を行うと学生に魅力を伝えられるでしょう。詳しくは、後述の「採用ブランディングを実施する」パートで解説します。
事前情報との差異があった
求人サイトや説明会で学生が聞いた内容と選考過程で知った会社情報に差異があり、不安や疑念を抱いて辞退に至るケースもあります。開示されている情報に一貫性がないと「何か隠しているのではないか」「本当はブラック企業なのかも」という懸念につながり、学生が他社に流れてしまうのです。
企業の良い面を訴求することは大切ですが、ありのままの情報を正直に伝える姿勢も重要です。適切な情報開示のポイントについては「RJP理論を実践する」のパートで解説します。
連絡・返信の対応が遅かった
次回の選考に関する連絡や返信対応が遅いと不誠実な印象を与えてしまい、よりスピーディに対応した他社に競り負けてしまう可能性が高まります。特にスピード感が求められるのが内定出しです。前述の通り、昨今は複数企業の選考を同時に受けている学生が多く、他社から良い条件で内定が出ると、自社の選考辞退につながりかねません。
素早い対応を心がけるだけでなく、採用フローの見直しが必要でしょう。
選考プロセスが長くて時間がかかる
連絡・返信対応だけでなく、選考プロセスが長期化することで、学生の離脱率が上がるのは一般的です。
特に新卒採用では、複数企業の選考を並行して受けている学生が多いため、スピード感のある選考を実施している企業ほど内定承諾率が高まる傾向があります。選考プロセスが長いと、以下のような問題が発生します。
- 他社で先に内定が出てしまい、そちらに流れてしまう
- 学生側のモチベーションが下がる
- 選考辞退や連絡が途絶えるケースが増える
これらはすべて歩留まり率の低下につながります。選考ステップの見直しや、面接日程の調整スピードを上げることが重要です。
担当者・面接官の対応に問題があった
人事担当者や面接を担当する面接官の態度が横柄だったり、価値観が合わないと感じたりすると、学生の入社意欲低下につながります。さらに、選考過程での対応は口コミサイトやSNSを通じて広まりやすく、企業の評判に悪影響を及ぼしかねません。
学生と接する面接官の教育を徹底するだけでなく、学生とのコミュニケーションマニュアル・面接マニュアルを整備して対応を平準化する工夫が大切です。
選考で適切に見極めができていない
企業が求める人物像と、実際に選考で評価される基準が一致していない場合、歩留まり率は大きく下がります。
例えば、面接官によって評価のばらつきが大きかったり、選考で企業の価値観やカルチャーが伝わっていないと、学生は「自分に合っていない」と感じてしまうでしょう。その結果、以下のようなことが起こります。
- 面接後の辞退率が高まる
- 内定辞退が増加する
- 採用しても早期離職に至る
このような事態を防ぐには、評価基準の統一・面接官トレーニングの実施・カルチャーフィットを意識した質問設計などが求められます。
内定者フォローが不十分だった
内定承諾率が低下する原因としては、内定者フォローの不足が挙げられます。新卒採用では内定出しから入社まで期間があくため、学生の意欲が低下しやすく、内定辞退につながりやすいのです。
内定を出したら入社までただ待つのではなく、情報発信のメールやイベントを通して定期的に接点を持つなど、学生のモチベーションを維持する施策が求められます。
家族や親戚から反対があった
学生本人が志望していても、家族や親戚の意見によって内定を辞退するケースも珍しくありません。
例えば、地方出身の学生が都市部の企業を受ける場合や、ベンチャー・中小企業など知名度の低い企業では、「安定性が心配」「聞いたことがない会社」といった理由で家族が反対することがあります。
家族の影響は、学生の最終意思決定に大きく影響を与えるため、企業側も無視できない要因です。これを防ぐために有効な対策は以下の通りです。
- 内定通知時に企業案内資料や経営理念を同封する
- 会社説明会や内定者フォロー時に「家族への説明用資料」を用意する
- 安定性や成長戦略を具体的に伝える
このように、学生本人だけでなく、その家族や親戚への配慮が歩留まり率改善につながります。
新卒採用で歩留まり率を改善する流れ
新卒採用の成功には、単に母集団を増やすだけでなく、「どこで」「なぜ」学生が離脱しているのかを把握し、改善していくプロセスが重要です。以下の4つのステップで、歩留まり率の可視化と改善を効果的に行いましょう。
1.採用プロセスごとに歩留まり率を算出する
まず最初に行うべきは、採用フローの各ステージごとに歩留まり率を数値化することです。主に以下のような項目が対象になります。
- 選考参加率(エントリー→説明会参加の割合)
- 面接通過率
- 内定率
- 内定承諾率
これらを定期的に集計し、時期や採用チャネルごとに比較分析することで、歩留まりが低いポイントを客観的に把握できます。
2.歩留まり率が低い課題を特定する
歩留まり率のデータをもとに、平均値と比較してどのフェーズで離脱が多いのか、なぜそうなっているのかを深掘りします。
【歩留まり率の平均値】
| 各フェーズの歩留まり率 | 計算式(%) | 平均値 |
|---|---|---|
| 選考参加率 | 選考参加者数÷応募者数×100 | 20~30% |
| 面接通過率 | 面接通過者数÷面接受験者数×100 | 30~40% |
| 途中辞退率 | 途中辞退者数÷選考参加者数×100 | 20~30% |
| 内定率 | 内定者数÷選考参加者数×100 | 2~3% |
| 内定承諾率 | 内定承諾者数÷内定者数×100 | 30~40% |
【具体例:課題の仮説】
- エントリー後に説明会参加者が少ない場合 → 学生との初期接点が弱い可能性
- 面接辞退が多い場合 → 面接日程調整や対応に問題がある可能性
- 内定承諾率が低い場合 → 他社に魅力で劣っている、もしくは情報提供が不十分な可能性
このように、各採用フェーズの数字と実際の運用を照らし合わせることで、「なぜ離脱しているのか」の仮説を立てやすくなります。
加えて、学生へのアンケートや選考辞退時のヒアリングを通じて、定性的な声も集めることで課題を特定しやすくなります。
3.課題を解決するアクションを実行する
特定した課題が明確になったら、次はそれを解消するための改善アクションを具体的に実行していきます。
歩留まり率の低下要因は企業によって異なるため、データに基づいたピンポイントな施策が効果的です。
【施策の具体例】
- 説明会参加率が低い場合:案内メールの件名や送信タイミングを見直す
- 面接辞退が多い場合:日程調整の柔軟化や面接官の対応改善
- 内定承諾率が低い場合:内定者フォローの強化や、企業の魅力を伝える動画・座談会の実施
重要なのは、単に施策をやってみるのではなく、「なぜそれを行うのか」「どんな結果を狙うのか」までを明確にすることです。仮説と目的を明確にして取り組むことで、次の検証ステップにつながる再現性の高い施策を行えます。
4.施策の効果を振り返る
改善施策を実行した後は、その結果を数値と実感の両面から検証するフェーズが欠かせません。
「やりっぱなし」で終わらせず、本当に効果があったのか、何がうまくいったのか、改善の余地はあるのかを分析することが重要です。
具体的には、以下のような指標をもとに振り返りを行います。
- 歩留まり率の改善幅(施策前後の数値比較)
- 採用プロセスの効率性(面接回数や所要期間の変化)
- 学生からのフィードバックや辞退理由の変化
さらに、関係部署や採用担当者間で情報を共有し、成功事例や失敗の原因をチーム全体で可視化することも、次の改善サイクルにつながります。この「振り返り」こそが、継続的に歩留まり率を高めていくための土台となります。
新卒採用における歩留まり率の改善方法

歩留まり率が低下する原因がわかっても、具体的にどのような施策を実施すればよいのか頭を悩ませている担当者も多いでしょう。新卒採用で歩留まり率を改善するための具体的な方法を紹介します。
RJP理論を実践する
RJPは「Realistic Job Preview」の頭文字を取った言葉で、「現実的な仕事情報の事前開示」と訳されます。アメリカの産業心理学者ジョン・ワナウス氏によって提唱されたもので、採用活動において企業の良い面ばかりを訴求するのではなく、ネガティブな情報も包み隠さず開示することで、結果的に採用の質が向上するという理論です。
RJP理論を採用活動に取り入れると、事前情報と実際の労働条件や職場環境の間にギャップが発生しにくく、歩留まり率の向上が期待できます。また「情報を正直に開示してくれる誠実な会社」という印象につながり、学生からのイメージアップにもつながるでしょう。
連絡やメールをスムーズ・丁寧に行う
選考に関する連絡やメール・メッセージ返信などは、できるだけスムーズかつ丁寧に行うよう心がけましょう。単に対応のスピードが早いだけでなく、学生の質問には明確に回答したり、一人ひとりのフェーズに合わせたメッセージを送ったりなど、内容の丁寧さにも気を配ることが大切です。
また、返信する時間帯にも配慮が必要です。できるだけ早急に返信したいからといって、深夜や早朝にメールを送っては「長時間労働が当たり前の企業なのではないか」と、学生の不安につながる可能性があります。9時~18時など、一般的な就業時間内に連絡をするよう注意しましょう。
面接官の教育・マニュアルの整備を徹底する
面接後の歩留まり率を高めるためには、面接で学生にマイナスの印象を与えないよう、面接官の教育や面接マニュアルの整備をすることが効果的です。
学生にとって面接官は初期に対面する社員であり、いわば「会社の顔」ともいえる存在です。自分が一方的に学生を評価するのではなく、学生から選んでもらう立場でもあるという自覚を促し、言葉遣いや身だしなみ、NG質問についてマニュアルに明記しておくとよいでしょう。
また、面接の質を向上させる手法としては「構造化面接」の導入も有効です。構造化面接では、職種ごとに統一された面接マニュアルを用いて、その規定に忠実に面接を進めます。面接の属人化を防ぎ、面接官の手腕によらず評価結果を平準化できるでしょう。
採用ブランディングを実施する
採用ブランディングとは、ターゲット学生へ効率的に接触して自社を選んでもらうため、戦略的な訴求を通して自社をブランド化する活動です。一貫した訴求を通して自社の魅力をターゲットに伝え、学生の入社意欲を喚起します。
採用ブランディングを強化すると、伝えたい自社の魅力をターゲット層へ的確に訴求でき、マッチ度の高い人材からの応募増加や、自社への入社意欲の向上が期待できます。その結果、途中辞退する学生が減り、歩留まり率の全体的な改善につながるでしょう。
内定者フォローを十分に行う
前述の通り、新卒採用では内定出しから入社までに期間があき、学生の入社意欲が低下しやすいことから、内定者フォローが十分でないと歩留まり率の低下を招きます。
内定者のモチベーションを維持するためには、定期的に接点を持ち、相手の不安や疑問に寄り添うコミュニケーションが必要です。内定者懇親会や先輩社員との交流会、座談会といった内定者向けイベントを実施し、内定者同士の仲を深めたり、社員へ直接質問できる機会を設けたりするとよいでしょう。
ツールを利用する
新卒採用における歩留まり率の改善には、感覚ではなくデータに基づいた判断が重要です。採用管理ツール(ATS)を活用すれば、選考フロー全体を見える化し、どのフェーズで学生が離脱しているのかを明確に把握できます。
たとえば「一次面接の辞退率が高い」などの傾向がわかれば、面接官の対応や学生との接点の見直しといった、具体的な改善につなげられます。
| ツールの種類 | 主な役割 |
| ATS(採用管理システム) | 選考状況の一元管理、通過率の分析 |
| LINE連携ツール | 説明会や面接の自動リマインド通知 |
| チャットボット | 学生の質問対応や情報提供を自動化 |
上記のツールを活用するメリットは、以下のとおりです。
- 離脱ポイントの特定による改善策の立案
- 対応の自動化で人事の工数削減
- 学生とのタッチポイント強化で辞退を防止
このように、採用活動にテクノロジーを取り入れることで、効率化と学生との関係構築を両立し、歩留まり率の改善に直結します。
自社に合う母集団を形成する
歩留まり率が低い原因のひとつに、「自社に合わない学生が集まってしまっている」ことがあります。ターゲット外の層が多いと、選考途中の辞退や内定辞退が増えるのは自然な流れです。そこで重要になるのが、戦略的な母集団形成です。
【取り組むべきポイント】
| 取り組み | 内容 | ポイント |
| 採用ペルソナの設定 | 活躍している若手社員を参考に、理想的な人物像(性格・価値観・志向性など)を明確化 | 「誰を採用したいか」を具体的に定義する |
| チャネルの最適化 | ペルソナに合う媒体を選定 例:・成長志向層→スカウト型・共感重視層→SNS | 「どこで出会うか」を戦略的に決定する |
このように、ただ数を集めるのではなく「誰を、どこで、どう伝えるか」を最適化することで、自社と相性の良い学生との接点を増やし、歩留まり率を高めることが可能になります。
学生からのフィードバックを反映する
採用活動を改善するうえで有効なのが、実際に選考に参加した学生の声を活用することです。
特に離脱した学生の意見には、企業側が気づきにくい「見えないボトルネック」が含まれていることが多くあります。
【フィードバック活用の具体策】
- 選考辞退時に簡単なアンケートや自由記述欄を設ける
- 内定者に対して選考全体の印象や改善点をヒアリング
- フィードバックを分析し、説明会・面接対応・連絡手段などを見直す
- 得られた意見をチーム内で共有し、翌年の採用設計に反映
学生視点のフィードバックを定期的に取り入れることで、主観に頼らない改善のサイクルが生まれ、歩留まり率の継続的な向上につながります。
まとめ

歩留まり率は、各フェーズにおける数値を算出し、採用フロー全体のボトルネックを把握することが大切です。歩留まり率が低下する原因は複数ありますが、主には選考過程における魅力の訴求が不十分だったり、学生へのフォローが不十分だったりして、学生がより条件の良い会社へと流れてしまうことが挙げられます。
採用ブランディングや内定者フォローの強化、面接官の教育など、各採用フローの見直しによって歩留まり率の改善は可能です。まずは各フェーズにおける歩留まり率を把握して、原因を究明するところから始めましょう。
以下は歩留まり率の把握・管理に活用できるKPIシート(Excel)です。歩留まり率の効果的な管理方法をご検討中の方はぜひダウンロードのうえご活用ください。

